2017年 08月 13日
私が騙されたとき②~閑話休題~
杏砂です。
騙されたとき、と言うとすこし言い過ぎかもしれません。
私が中学生か高校生のときのことです。
新幹線のなかでの出来事なので、
おそらく修学旅行のときだったと思います。
記憶は定かではありません。
東京へ向かう、帰りの車内です。
「Aさんがカードを言い当てているよ、すごいよ」
と、誰かが言って回っていました。
「え、何だろう」と思って、私も友人といっしょに彼女のところまで行きました。
すると、誰かが引いたトランプのカードを当てているのです。
「ハートの10」とか「スペードの8」とか。
いやぁ、本当に驚きました。
いつの間にこんな能力を身につけたのだろう、と。
私はすっかり信じていました。
なぜならAさんは、もともとちょっと不思議な子だったのです。
この前後も、ポール・マッカートニーが来日するというのでいっしょに行こうと誘われたのですが、
チケットが手に入らないでしょう、と言うと、何とかするから、とニコニコしながら言っていました。
この人なら何とかしちゃうかもしれないな、という気持ちにさせてくれるような、
そんな子だったのです。
そういった予備的な意識もあったからでしょう。
Aさんの超能力を疑いもしませんでした。
少ししてから、別の友人が言いました。
「あれ、うそだよ。Bさんが教えてるのよ」
はっきりとしたトリックは覚えていませんが、
トンネルのなかで窓にカードを映してそれを見ていた、だったと思います。
なので、その超能力はトンネルのなかでしか発揮できない。
AさんとBさんは二人でみんなを騙して、いや、楽しませていたのです。
こういう騙され方はよくあります。
ある人への自分のなかのイメージが別のときにつながる、点と点の間が線になってつながる瞬間です。
詐欺師のテクニックです。信用させて、最後に大きく騙す。
私のこの体験は詐欺というほど大きなことではありませんし、
彼女からの積極的アプローチではなく、私自身で勝手に組み立てていた彼女への印象からの思い込みの結果ですので、相手からすれば迷惑な話だと思います。
もしこれが本当の詐欺だったら、なんとも私はいい鴨です。大した努力なく自ら騙されるのですから。
実際そういうこともあると思います。騙すつもりはなかったが結果として騙し騙される関係になってしまった、など。
人間の心理というのは、複雑に絡み合っていますので。
トリックだと分かってショックを受けるとか、Aさんを嫌いになるとか、そういうことは特にはありませんでした。
なぁ~んだ、と思いながら、
実はちょっとがっかりしていたかもしれません。
Aさんが超能力者だったらよかったのに、という落胆です。
まさかとは思いますが、
あの場の全員が一丸となって私をからかった、ということはないですよね。
いや、それほど私はけっこう騙されやすくて単純な反応を返すので、騙し甲斐がある生徒だったと思います。
あるいはもしかすると、次々人を呼んできて、前にいる人たち全員が共犯になる、というゲームだったかもしれません。
あまりによくできていましたから。
今となっては事の真相は分かりません。
この小さな出来事は、ときどき私の心のなかに蘇ってきます。
おそらく、私の批判的精神の一端を担ってくれているように思います。
ポール・マッカートニーのチケットは手に入りませんでした。
確か、ポール自身も、薬物関係で日本に入ることができなかった、
と記憶しています。
by 7of9voyager
| 2017-08-13 08:59
| 閑話休題